部下を評価する際に大事にしたいマインドセット
組織の仕組みで、定期的に部下を人事評価する機会があると思う。その評価は効果的になっているだろうか? 単にお約束事で終始してないだろうか?
この評価のあり方次第で、評価対象者のモチベーションや行動に大きな影響を与えるだけでなく、上司と部下の間に築かれる信頼関係そのものにも深く関わってくる。
かつては評価者が正確な評価を下すことこそが、人事評価において最重要事項と考えられていた。
しかし近年は組織メンバーの主観的な反応(認知)が重要視されており、その反応が人事評価制度の効果性や組織メンバーのモチベーションに影響すると考えられている。
評価が有益なフィードバックを提供するものであれば、部下は自分の強みや改善点を理解し、成長のための具体的なステップを踏むことができる。
また、公正感が保たれた評価は、部下に対して組織全体の透明性と信頼性を示し、彼らの満足感を高めることに繋がるし、ひいては組織コミットメントにも寄与する。
そして、評価が有用であると感じられれば、部下はそのフィードバックを基に自らの行動を見直し、より次の期に向かって動き始める動機づけになるだろう。
評価者として大事にしたい根底の心構え(マインドセット)として、まず「成長マインドセット」が挙げられる。
これは、失敗を単なるミスとして捉えるのではなく、そこから学びを得る貴重な機会と考える姿勢だ。失敗を恐れず、そこから得られる教訓を次の成功に繋げることで、(なにより評価者自身も成長し、)部下に対してもその姿勢を示すことができる。
次に「共感力」。 部下の視点を深く理解し、彼らの感情に寄り添う能力を指す。部下が直面している課題や感情(どんな思いをしているのか)を理解することで、より適切なフィードバックを提供し、信頼関係を築くことが可能になるのだ。
結果として、いかにして部下が自律的に動けるようにするか?
評価者は、部下が自律的に考え、行動できる環境を整えることが求められる。具体的には、部下が自由に意見を述べられる雰囲気を作り、失敗を恐れずに挑戦できる文化を育むことが重要である。
自律的に動ける部下は、自らの役割を理解し、積極的に行動することで、組織の目標達成に貢献できる。彼らは自分の仕事に対する責任感を持ち、問題が発生した際には自ら解決策を考え出し、実行に移すことができる。これにより、組織全体のパフォーマンスが向上し、チームの士気も高まる。
評価には「目標管理」という要素があるが、組織全体のビジョンと紐づけするとともに、改めて個々のビジョンの解像度を上げてあげよう。
これにより、部下は自分の役割が組織全体の成功にどのように貢献するかを理解しやすくなる。
もっと言えば、将来どんな姿になってそうか?(上司から)どんな姿を期待するか? 本人にはまだ見えていない将来の絵を共にイメージし、具体的な目標を設定する。
これにより、部下は自分の成長の方向性を明確にし、日々の業務に対する意欲を高めることができる。
そして、「こんなふうになったら良くない?」「きっと実現できるでしょ!」といった後押しの言葉をかけることで、部下のモチベーションを高め、彼らが自信を持って目標に向かって進むことをサポートする。
つまり、その将来の姿に少しでもワクワクできるかどうか。でないと、人はその方向に動こうとか、もうひと頑張りしよう、とはならない。
これを実現するためには、日頃から部下のことをよく観察して、「この人だったらこうなるだろう」という絵が上司自身に見えてなければならない。部下の強みや弱みを理解し、彼らがどのように成長できるかを見極めることが必要になる。
このプロセスこそがまさに“コーチング”だが、これを通じて、部下が自らの可能性を信じ、成長を続けることができるように導くことが、評価者の重要な役割となるのだ。
このようなマインドセットを大事にした評価を通じて、部下は自分の目標に向かって進むための具体的なステップを学び、自己成長を促進することができる。
だからこそ、組織全体のパフォーマンスが向上し、持続的な成長を収めることが可能となるのだ!
参考・引用)放送大学教材 「産業・組織心理学」 山口裕幸 著
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