認知症の方とのコーチング・コミュニケーション
理学療法士資格を取得し、臨床に出てから20数年、一貫して介護老人保健施設、そして近年ですと訪問の分野でリハビリテーションを提供してまいりました。
高齢者を中心にのべ何百人なのか何千人か分かりませんが、かなりの数の認知症の方たちと接してきたことになります。
10年ほど前にコーチングと呼ばれるコミュニケーション手法を専門的に学び、これまで施設マネジメントや臨床への応用を試みてきました。
2010年~14年まで所属老健施設の施設長として動いてましたが、毎日のルーティンワークの中に、「施設ラウンド」がありました。
それは、施設内外をくまなく回り、スタッフに声をかけたり、チームの雰囲気を見たり、においのチェック、汚れや破損している箇所のチェックをするのです。
それと同時に、あちこちにいる認知症の利用者さんに挨拶をしたり、声をかけたり、ベンチに座ってしばしおしゃべりをしたり、テーブルで数人の方たちとお茶を飲んだりすることも重要な役目の一つでした。
そこでやり取りすると、一瞬で落ち着いたり、和やかな雰囲気になることに、よくスタッフから驚かれていました。
また、落ち着きなく施設内を徘徊したり、外に出たがる方の対応もよくやったものでした。

それもそのはず、実は、私は前述したコーチングの様々なテクニックを応用して、コミュニケーションをとっていたのです。
すると、(もちろん全例とはいいませんが)多くの方たちとスムーズに関係性を築き、何とも楽しい雰囲気になることに気づいたのです。
それは今も実際、訪問リハビリの際、認知症のある方に自然と用いています。
認知症の方とのコミュニケーションテクニックというと、「バリデーション」や「パーソンセンタードケア」、「回想療法」、最近ですと、「ユマニチュード」などが知られています。
それらで言われていることというのは、実は色々と共通している部分があって、私もそれをしてきた、ということになります。
つまりは、人と人とが良好で穏やかな間柄、これを信頼関係とまで言っていいのか分かりませんが、何となく和やかに通じ合っている状態ですね、そうするための基本原則はだいたい決まっている、ということです。

私自身の基本スタンスでもありますが、「この人は認知症だから、こう」という明確な線引きは無いのです。
いわゆる認知機能レベルとして、全くの普通・正常というところから、かなりのケースバイケースや、所々の不具合などを経て、全く意思疎通の難しい、重度の状態へと移っていきます。
認知機能の問題のない人と話していても、どうにもスムーズに意思疎通が難しい方、クセの強い方も多々いらっしゃいます笑
物忘れや勘違いなんてのも日常茶飯事でしょう。
高次脳機能障害との方とのコミュニケーションだって、同様です。
ですので、いずれの場合も結局はその人の世界観に思いを寄せ、そこに即した言葉使いをしていく、ということになろうかと思います。
そんな、私自身がこれまでの経験の中で培い、実践してきたコミュニケーション手法-研究者ではなく実践家としての手法というものを、介護現場で役立てていただくべく、これから様々な形でご紹介していこうと思ってます!

